No.192 洞窟を抜けて(8回裏)
私はピカである。 河野家のペットをしている(あくまで仕事で、だ)。
以前はとても元気であった。 しかしながら今では病気がみつかり、元気ではない。
さて、毎晩目をつぶると同じ夢を見るようになっている。
暗い洞窟のようなところを歩く夢だ。
私は犬であるので、暗がりは得意な方である。
しかしながら洞窟の中はわずかな光も届かないため、さすがに明りが必要だ。
そんな時に夢と言うのは便利である、ふと気が付くと私は火のついたろうそくを持っているのだ。
ろうそくは細く短いため、洞窟を渡るかすかな風にもなびき、今にも消え入りそうであり、しかもあっという間に短くなっていく。 そんな時は道に落ちているろうそくを拾って火を継がなければならない。
その瞬間に消えてしまうとそこで夢から覚めるのである。
その時は具合も悪く、病気が良くなっているようには思えない。
今夜もまた同じ夢をみている。
今日も具合が悪く、手の震えは止める事ができない。
ろうそくは何度も拾っているが皆細く短い。
これではまた火を継ぐことが出来ないではないか。
私は歩きながら何度か吐いてしまった。
だが、三度目の嘔吐の時に、おなかの中でバリバリっと音がした。おなかの皮が破れたのではないかと心配になったが、そうではなかった。
理由はわからないが、それ以降、とても具合が良くなったのだ。
落ちているろうそくも細く短かったのだが、それ以降は長く太くなってきた。
そしてとうとう、洞窟の向こうに明りが見えてきた。
「出口っぽい??」 私は期待に胸が高鳴っている状態で目を覚ました。
何か月かぶりに、寝覚めの良い朝を迎える事ができたのだ。
(9回表へ続く)