No.191 宣告の行方(8回表)
2024年11月22日
ピカは3日間入院をした。輸血を1回してくれて、2日間は病院で元気を取り戻した。
そして、退院予定の22日の朝、彼女はまた下血した。
すがる気持ちで迎えに行った我々に、現実は厳しかった。
「もう一度輸血をトライしてもいいですか?」担当医は提案してくれた。
私達は「元気になるなら、なんでもお願いします」という気持ちで聞いていたが
先生の言葉は我々の気持ちの斜め上を超えていった。
「輸血して、血が抜けなければしばらくは元気にいられると思います。
でも、血が抜けるとしたらもしかするとそのまま死ぬかもしれません。
確率は言えませんが、ピカちゃんもご家族もここにいるよりは一緒にいてあげる
方が幸せだと思います。どうか一緒にいてあげてください」
事実上の余命宣告であった。 先生は家族が一緒にいれる時間を輸血で作ってくれた。
最後の輸血で少し元気になったピカと、東大を散歩した。散った銀杏並木の葉が木枯らしに舞いながら彼女に道を開ける。まだ天国の道へは続かないで欲しいのだが。
千葉に帰って家族で写真を20枚撮る。一応「いい顔」をした。
次の日は連休だった。いつもの散歩道を歩く。最後の散歩かもしれない。
お友達と会うと泣いてしまうので、時間帯を少しずらす。それでも会ったお友達には
病状を話す。つとめてあかるく話す。
夜は急変したときにすぐにわかるように、ピカの近くで寝る。いつもは別の部屋だ。
ピカも私達も緊張して眠れない。寝不足になる。 だが、寝不足になる分だけピカは
命を延ばしていく。きついが、嬉しい。だが、おそらく「死」はどこか近くにいる。
不思議な感覚を掴みながら何日かを過ごした。過ごせたのだ。
ピカの生命力は強いのかもしれない。
病院の先生と電話で話しながら、対処療法を考える。
食事も少しながらとれるようになってきた。
夜も、また別の部屋で寝るようにした。
朝起きて食べたものを吐いてしまう時もある。
その時には「死神」が近くにいる事を思い出す。
服用する薬は6つ。元気になる事を信じてやれる事をするしかない。 先生を巻き込んだトライアンドエラーが始まる。