社長コラム
予兆 〜2回表〜
2025年1月 1日掲載
風も心地よい10月の夕暮れ。
私は愛犬と共に特訓の最中であった。
特訓とは、およそ6キロの道程を速足で散歩をするという二人だけの
秘密のトレーニングである。 活動量の多い我が家の一人娘、その欲求を
満たさんが為、飼い主が背負わされた十字架でもある。
私が握る綱から、彼女のやる気が伝わる。私も負けてはいられない。
股関節を意識して動かし、できるだけの大股でストライドを伸ばしていく。
やはり、運動好きの犬種だ。 私は鼻の頭に沸いた汗の粒が大きく成長していくのを
自覚しながら、それを拭かせないほどの勢いの濁流に飲まれながら
2キロを進んだ。 いや、2キロ流された、と言った方が正しかっただろう。
ふと、ピカ(愛犬の名である)の足が止まった。
場所まさに「京葉道路 穴川インター入口」。
千葉市では知らない者のない、渋滞のメッカである。
高速道路の入り口のため、車の往来はとてつもなく激しい。
また、歩行者のために歩道橋が設置されてはいるが、歩行者自体があまりいないため、
手すりには蔦がからまり、増長した雑草は床を覆わんばかりに権勢を誇っている。
彼女は車の激しい交差はあまり好まない。
音や振動にどちらかと言えば臆病になる質である。
とはいえ、今までの特訓では歩きたいという欲求がはるかに自身の本質を
上回っていた。歩道橋も2段飛ばしと言わんばかりに上がっていたものだ。
「おや?」
さすがに、3歳ともなると疲れやすくなるのかもしれない。
おやつを欲しているのかとも思い、差し出してみたがそれもあまり乗り気では
ないようだ。
今回の特訓は2キロで終了。
ダルそうな体を抱っこして今回の特訓は終了となった。
その時はそう思った。 その後の事も知らずに...。
(2回裏へ続く)