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社長コラム

カイイヌの品格 6

2024年9月 1日掲載

朝起きると「ゴシュジン」は私の部屋に掛けてあるシーツを取り払う。
今日は「トーチョン」が私の目覚まし時計役となった。

相変わらず「カーチョン」の機嫌は悪い。
原因は新たに「この家の男ども」になった。
先月まではこの夫婦の子供たちのだらしなさにカーチョンは怒っていたのだ。
そして7月の末、そこに「トーチョン」も加わった。
彼もまた、生来「だらしない」ヒトである。
世の中には例外は多いが、この家族の男どもはことのほか忘れっぽい。
今回はカーチョンの誕生日を全員忘れて浮かれていたのだ。
子供たちはバイトやサークルに現を抜かし、トーチョンもまたテニス三昧。
これでは、毎日身を粉にして働くカーチョンが可哀そうだ。

私は毎朝起きては彼女の顔をなめて慰め、散歩のごとにトーチョンに口酸っぱく
言っていたのだが、全くこちらのいう事を聞かない。
子供達には食って掛かって知らせたのだが、これまたスマホばかりを気にして
私の意見には耳も貸さない。
これではカーチョンの悩みも消える事はないだろう。
そんな時、私はカーチョンの膝に乗り心の痛みを分かち合ってあげるのだ。
それこそが「カイイヌ」の役目である。
気高き我々種族の「高貴なる使命」と言ってもいいだろう。

家の外でトーチョンの車の音がする。 夜になっても熱い千葉の風に乗って
イチゴショートの匂いが鼻先にたどり着いた。
トーチョンはようやく正解に気づいたようである。

カイイヌは気軽な稼業ではない。これも日本人すべてを「ゴシュジン」に
するための大切な活動なのだ。 さて、しっぽを振る準備をするとしよう。
(終)

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